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深夜2時、俺はまた他人のデスクを眺めていた。いわゆる「デスクツアー」というやつを、動画や写真で延々とハシゴしてしまう、あの不毛で幸福な時間である。
そこに映る机はどれも美しかった。配線は視界から消え、モニターは宙に浮き、キーボードは薄く、静かに光っている。ひるがえって現実の俺の机には、埃をかぶったケーブルの束と、いつのものか分からないレシートの山。この理想と現実の落差を、俺は金で埋めることにした。そうして手を出したのが、レイザーの薄型ワイヤレスキーボード「DeathStalker V2 Pro」である。名前の圧がすごい。直訳すれば「死の追跡者」。俺はただ綺麗な机で資料を作りたいだけなのだが、まあ、強そうな名前は嫌いじゃない。
ちなみにそれまで使っていたのは、何年前に買ったかも思い出せない安いキーボードだった。テカテカになったキートップ、微妙に反応の悪いスペースキー。道具としては動いていたが、机に向かう気分を上げてくれる存在では断じてなかった。人間の作業意欲というのは、案外こういうところから漏電していくものだ。
先に言っておくと、この買い物は「半分は大成功、半分は好みが分かれる」という結果に終わった。デスクの見た目と無線の快適さは文句なし。ただし打鍵感については、正直に書かねばならないことがある。順番にいこう。
DeathStalker V2 Proとは:薄型ワイヤレスキーボードの特徴
DeathStalker V2 Proは、レイザーが展開する薄型(ロープロファイル)のワイヤレスゲーミングキーボードだ。ゲーミングキーボードといえば分厚い筐体にゴツゴツしたキーというのが伝統的な様式だったが、これはノートPCを思わせる薄い筐体に、浅めのキーを載せた路線である。
特徴を挙げると、金属調の薄い天板、複数のデバイスを行き来できるワイヤレス接続、音量調整に便利なローラー、そして落ち着いたライティング。ゲーミング由来の技術を土台にしながら、見た目は意外なほど大人しく、仕事用のデスクに置いても悪目立ちしない。細かい仕様や現在の価格は変動があるので、正確なところはリンク先で確認してほしい。
余談だが、薄型キーボードというジャンル自体、ここ数年で存在感を増している。ノートPCで育った世代が社会の多数派になり、「浅いキーこそが標準」という感覚の人が増えたからだ。ゲーミングブランドがその需要に本気を出すと何が起きるのか。本機はその答えの一つと言っていい。
「ゲーミングデバイス=光り物のお祭り」という偏見を持っていた俺にとって、この製品の第一印象は「あれ、大人じゃん」だった。要するにこれは、ゲーミングの技術で作った大人の薄型キーボードである。問題は、その打ち心地が万人向けかどうかだ。
本音レビュー:デザイン・遅延・打鍵感を正直に評価する
使い込んだ俺の率直な感想を、そのまま置く。
正直、見た目とワイヤレス性能には文句がない。遅延も感じず、デスク映えもする。ただ、打鍵感はかなりソフトで、「気持ちよく打てるか」と言われると、俺には刺さらなかった。高性能ではあるものの、打鍵感を重視する人が試さずに買うと、後悔する可能性がある。
まず光の部分から。デザインは本当に良い。薄く、無駄がなく、置くだけで机の視界からノイズが一段減る。あれほど憧れた「他人の机」に、自分の机が確実に一歩近づいた。物欲というのは不思議なもので、道具が綺麗だと机に向かう回数そのものが増える。これは精神論ではなく、俺の生活で観測された事実である。
無線の完成度も高い。タイピングで遅延を感じた瞬間は一度もなく、接続が不安定になって会議中に慌てた記憶もない。複数台を切り替えられる仕様も地味に効いていて、仕事用とプライベート用のPCを行き来する人間には確かな恩恵がある。ワイヤレスにありがちな不安要素は、俺の使用範囲ではほぼ潰されていた。ゲーム用途で鍛えられた応答性能を日常作業に使うのだから、まあ当然といえば当然の余裕ではある。
ついでに言うと、音量ローラーが想像以上に便利だった。動画や音楽の音量を、つまみでスッと調整できるだけの装備なのだが、一度慣れるとローラーのないキーボードに軽い不便を感じるようになる。人間の堕落は早い。
ライティングにも触れておく。ゲーミングらしからぬ控えめな光り方で、単色でじんわり光らせておくと、深夜のデスクがちょっとしたバーのカウンターになる。派手に光らせることもできるが、大人はやらない。やらないが、「やろうと思えばできる」という事実が所有欲を満たす。この精神構造は、ガジェット好きなら説明不要だろう。
さて、問題の打鍵感である。
このキーボード、キーがとにかくソフトに沈む。薄型なのでストロークは浅く、抵抗は軽く、音も控えめ。スッ、スッ、と指が滑るように入力されていく。これを「上品で疲れにくい」と評価する人は間違いなくいる。静かなので深夜作業やWeb会議との相性も良く、長文を淡々と打ち続ける用途なら、むしろ美点ですらある。
だが俺は、キーボードに「手応え」を求める人間だった。カチッとした節度、押し切ったときの確かな反発、打っていて楽しくなるリズム。そういうものを期待して指を乗せると、このソフトな感触は肩透かしに近い。打てる。速く打てる。正確に打てる。でも、気持ちよくはない。例えるなら、完璧に整地された道をずっと歩いている感覚だ。転ばないし疲れない。ただ、景色に起伏がない。道具の「性能」と打鍵の「快感」がまったくの別物であることを、俺はこのキーボードで骨身に沁みて学んだ。
誤解しないでほしいのは、これが「欠陥」ではなく「性格」だという点だ。薄型キーボードはその構造上、深いストロークの打ち応えとは物理的に両立しない。ソフトな打鍵感は、薄さと静かさの対価なのである。だから打鍵感を最重要視する人は、この路線に踏み込む前に、どこかで一度、薄型キーの感触を自分の指で確かめたほうがいい。
総評すると、視覚と利便性は一級品。打鍵の快感は好みがはっきり分かれる。このキーボードの評価は、あなたがキーボードに何を求めるかで綺麗に反転する。
メカニカルとの比較:どっちを選ぶべきか
ここでロジカルに整理しよう。キーボード選びの軸は無数にあるように見えて、突き詰めると「何を最優先するか」の一点に集約される。派閥は3つだ。
(1)デスク映え・静音優先派。 机は仕事場であると同時に自分の城。見た目のノイズと打鍵音を減らしたい人。この派閥にDeathStalker V2 Proは強く刺さる。薄さは正義であり、静かさは同居人と深夜作業への礼儀でもある。
(2)打鍵感優先派。 打っている時間そのものに快感を求める人。カチカチした節度や打鍵音まで込みでキーボードを愛する人。この派閥は素直に、厚みのあるメカニカルの世界で軸を吟味するほうが幸せになれる。薄型は最初から選択肢の外でいい。
(3)実用一点張り派。 打てれば何でもいい人。この派閥は本来この価格帯を覗く必要がない。ただし、キーボードは1日で最も長く指が触れている道具でもある。「何でもいい」が本心なのか、単に良い道具を知らないだけなのかは、一度疑ってみる価値がある。
打鍵感を確かめたいが近くに実機がない、という人への現実解も書いておこう。家電量販店で薄型ノートPCのキーボードを触ってみることだ。厳密には別物だが、「浅くてソフトな打鍵」という方向性は体感できる。あの感触が好きなら適性あり。物足りないと感じるなら、あなたは打鍵感優先派の可能性が高い。
値段についても一つだけ。仮にこのクラスのキーボードを4年使うとすれば、1日あたりのコストは数十円程度まで薄まる(価格は変動するので、あくまで仮の目安として見てほしい)。1日に何千回と叩く道具への投資としては、割高とは言い切れない。問題は金額よりも、その何千回の打鍵を「快感」で過ごしたいのか、「静けさと見た目」で過ごしたいのか、である。
その上で、買う前に確認すべき3か条。 一、メカニカルらしいカチッとした打ち応えを期待している人は、期待の方向がそもそも違う。二、打鍵感を最重視するのに試す機会がない人は、賭けになることを自覚してから注文すること。三、デスクの見た目に一切興味がない人は、この製品の魅力の半分を最初から捨てることになる。
逆に、ノートPCの浅いキーが好きで、デスクを綺麗に保ちたくて、無線の安定性に金を払える人。この3条件が揃うなら、これはかなり幸福な買い物になるはずだ。
結論:「スペック表に打鍵感は載らないの法則」
最後にまとめよう。今回の教訓を、俺は「スペック表に打鍵感は載らないの法則」と名付けた。
応答速度、接続方式、電池、材質。スペック表は多くのことを教えてくれるが、あなたの指が感じる快・不快だけは、どこにも書いていない。そしてキーボードという道具の満足度は、皮肉なことにその「書いていない一行」で決まる。レビューを何十件読み込んでも、最後の答え合わせだけは、あなたの指でしかできないのだ。
俺にとってこのキーボードは、「打つ喜び」ではなく「整ったデスクと、ケーブルのない自由」をくれる道具だった。それは打鍵の快感とは別種の、しかし毎日確実に効いてくる満足である。おかげで俺の机は、深夜2時に眺めていた「他人の机」に、ずいぶん近づいてしまった。次は誰かが俺の机を眺めて眠れなくなる番である。自分がキーボードに何を求める人間なのかを見極めてから、リンク先を覗いてほしい。価格は変動するので、最新の状況はそちらで確認を。


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