デロンギ マグニフィカスタート レビュー|「ボタン一つで喫茶店」は本当か。使い込んで見えた光と闇

白いカップにエスプレッソを注ぐ全自動コーヒーマシンと湯気

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断言する。社会人の朝のコーヒーには2種類しかない。「淹れるコーヒー」と「並ぶコーヒー」だ。

かつての俺は完全に後者だった。出社前、コンビニのレジ横マシンに並び、前の客がカフェラテLサイズのフタを閉め損ねるのを無の表情で眺めながら、貴重な朝の3分を溶かす日々。家で淹れればいいって? 分かってる。ハンドドリップが「丁寧な暮らし」の象徴なのは重々分かってる。だが考えてみてほしい。お湯を沸かし、豆を挽き、フィルターを折ってセットし、蒸らしで30秒待ち、細く円を描くように注ぐ——この茶道めいた儀式を、寝癖のついた頭で毎朝こなせる人間が、この国に何人いる? 少なくとも俺には無理だった。三日で挫折した男がここにいる。

そんなズボラの前に現れたのが、デロンギの全自動コーヒーマシン「マグニフィカスタート」である。結論から言うと、こいつは俺の朝を変えた。ただし、想定外の「音」と引き換えに。今日はその光と闇を、包み隠さず書く。

マグニフィカスタートとは何者か

まず基本情報を整理しよう。デロンギはイタリアの家電メーカーで、全自動コーヒーマシン界ではほぼ横綱。その中でマグニフィカスタートは、シリーズの入り口にあたるエントリーモデルという立ち位置だ。

何をもって「全自動」と名乗っているのか。豆と水をタンクに入れておけば、ボタン一つで、豆を挽く→粉を押し固める→高圧で抽出する→使用済みの粉を内部のカス受けに落とす、までを一気通貫でやってのける。人間に残された仕事は、カップを置いてボタンを押すこと。以上。あのハンドドリップの儀式一式を、機械が黙々と……いや、後述するがまったく黙ってはいないのだが、とにかく全部代行してくれる。

エスプレッソもレギュラーコーヒーもボタンで選べて、濃さや量の調整もできる。つまりこれは「コーヒーメーカー」というより「うちの台所に住み込みで働くバリスタ」に近い。なお細かいスペックや現在の実売価格は変動があるので、正確なところはリンク先で確認してほしい。ここでは「毎朝の挽きたて一杯を自動化する箱」と理解してもらえれば十分だ。

使い込んで分かった本音レビュー

まず光の部分から。実際に使っている俺の率直な感想はこうだ。

操作がとてもシンプルで、ボタン一つでちゃんと美味しいコーヒーが出てくる安心感がある。豆もきちんと挽いてくれて、全自動としての満足度は高い。

この「ちゃんと美味しい」という表現が、われながら絶妙だと思っている。感動的に美味いのではない。こだわりの専門店で出てくる一杯には届かない。だが「豆から挽きたて」のアドバンテージは伊達ではなく、インスタントやドリップバッグとは明確に別次元の香りが、毎朝ノーモーションで立ちのぼる。重要なのは味の最大値ではなく、「毎朝」「ノーモーション」という再現性のほうだ。人間、うまいコーヒーのために毎日努力することはできない。だがボタンなら毎日押せる。ここに全自動の本質がある。

さて、ここからが闇だ。よく聞いてほしい。

闇その1、動作音。 初めて起動したとき、俺は本気で「壊れたのか?」と思った。豆を挽くグラインダーの音は、静まり返った朝のキッチンにおいて、体感ほぼ工事現場である。ガガガガ。おいおい豆を挽いてるんだよな? 基礎工事じゃないよな? と確認したくなる音量だ。挽き終われば静かになるので時間にすれば短いのだが、家族が寝ている早朝に使うなら、覚悟か根回しのどちらかが必要になる。俺は根回しを選んだ。

闇その2、自動電源オフ。 省エネ設計なのは偉い。偉いのだが、少し間が空くと勝手に電源が落ちる。何が起きるかというと、食後に「もう一杯いくか」と思うたびに、再起動→内部クリーニングのウィーンという音を聞きながら、しばし待たされるのだ。1杯目の優雅さを、2杯目の待ち時間が律儀に回収しにくるスタイル。正直、これは面倒くさい。対策があるとすれば、2杯目まで飲む予定の日は最初から連続で淹れてしまうか、電源が落ちる前に飲み切る潔さを身につけるか。どちらにせよマシン側ではなく人間側が適応する羽目になる。この主従の逆転こそ、全自動家電あるあるだと思う。

なお、音について一つ弁護しておくと、これはマグニフィカスタート固有の欠陥というより、全自動という種族の宿命に近い。硬い豆を金属の刃で砕く以上、物理法則的に静かなわけがないのだ。どの全自動マシンも多かれ少なかれ鳴く。だから比較検討中の人は「静かな全自動を探す旅」に出るより、「鳴くものだと受け入れて使う時間帯を設計する」ほうが建設的だと思う。俺の場合、家族が起きてくる時間に合わせて挽くようにしたら、工事音は「朝が来た合図」に格下げされた。人間は慣れる生き物である。

ついでに白状すると、買う前の俺は「全自動って手入れが地獄なのでは」と疑っていた。実際に待っていたのは、水タンクの補充と、内部に溜まった使用済みの粉をたまに捨てる程度の日常だった。ゼロとは言わないが、毎朝ドリッパーとフィルターと格闘する生活よりは明らかに軽い。このあたりの心理的ハードルで足踏みしている人は、たぶん俺と同じ取り越し苦労をしている。

総評するなら、「味重視で、細かい作法には割り切れる人向け」。音と2杯目問題に目をつぶれば、味と手軽さの両立という本来の仕事は、間違いなく本物だ。

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ロジカルに整理:あなたはどの派閥にいるべきか

ここで一度、感情と擬音を排して整理しよう。毎朝コーヒーを飲む人間の選択肢は、実質4つしかない。

(1)コンビニ・カフェ通い派。 1杯100〜200円前後。手間ゼロに見えるが、「並ぶ・往復する」という時間コストが毎日発生する。仮に1杯130円を平日240日続けると年間約3万円。2杯なら6万円コースだ。しかも雨の日も並ぶ。

(2)ハンドドリップ派。 豆代だけなら1杯あたり数十円で済み、味の上限も一番高い。ただし毎回5〜10分の儀式が必須。休日の趣味としては最高だが、平日の朝に組み込むには重い。俺のように三日で挫折する人類が一定数いる。

(3)カプセル式派。 手軽さは全自動と互角で、本体も安く、音も控えめ。入門としては優秀だ。ただしカプセル単価はおおむね1杯数十円〜100円前後とドリップより高めで、飲めば飲むほどじわじわ家計に効いてくる。そして何より、挽きたての豆の香りとは別物である。カプセルを箱買いしながら「これ、続けるほど損では?」と気づいてしまった人が、次に流れ着くのが全自動というのはよくある進化ルートだ。

(4)全自動派。 マグニフィカスタートはここ。初期投資は4つの中で一番重い。そのかわりランニングは豆代だけで、市販の豆なら1杯あたり数十円。手間はボタン一つで、味は挽きたて。つまり「飲む回数が多い人ほど、初期投資が薄まっていく」構造になっている。仮に本体を6万円とし、コンビニ通いとの差額を1日100円とすれば、毎日飲む人なら2年弱で元が取れる計算だ(価格は変動するのであくまで目安として見てほしい)。

結論はシンプルで、飲むのが週に数杯ならカプセルかコンビニで十分。毎日1〜2杯以上を年単位で飲み続ける自覚があるなら、全自動が論理的な解になる。

念のため、逆側もはっきりさせておこう。次の3か条のどれかに当てはまる人は、今回は見送るのが正解だ。

買ってはいけない3か条。 一、深夜早朝の静寂こそ至高であり、家庭内の音問題を調整する気がない人。二、2杯目を秒で飲みたいせっかちな人(再起動の待ち時間と毎回ケンカになる)。三、コーヒーは週末に数杯だけという人(初期投資が一生薄まらない)。

この3か条を全部すり抜けた人だけが、レジ横の行列から合法的に離脱できる。買い物で失敗する人の大半は、商品の性能ではなく「自分の生活とのミスマッチ」で失敗する。だからこそ、スペック表より先に自分の朝の過ごし方を思い出してほしいのだ。毎朝コーヒーを飲んでいるか。その一杯に、いま時間か金のどちらを払っているか。答えがすでに出ている人には、このマシンは道具ではなく時短装置として機能する。

結論:「朝は金で買えるの法則」

最後にまとめよう。俺はこの手の家電への投資を「朝は金で買えるの法則」と呼んでいる。

マグニフィカスタートが売っているのは、厳密にはコーヒーではない。「何も考えなくても、挽きたての一杯が出てくる朝」そのものだ。動作音という代償はある。2杯目の待ち時間という小さなストレスもある。それでも、寝癖頭のままボタン一つで立ちのぼるあの香りは、昨日までコンビニで列に並んでいた自分への、ささやかな下剋上である。

最後に実務的な話を一つ。この手の型番家電は、Amazonの大型セールで価格が動きやすい。急ぎでなければ、リンク先でほしい物リストに入れて価格の推移を眺める作戦も賢い。ただし経験上、「セールを待っている間に飲んだコンビニコーヒー代」が値引き額を静かに超えていくのが人間というものだ。毎日飲む人間にとっては、迷っている時間そのものがコストである。あなたの朝は、思っているより安く買える。

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