FILCO Majestouch Convertible3 レビュー|名門キーボードが俺には合わなかった正直な話

真鍮のデスクランプに照らされたアイボリーのメカニカルキーボード

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先に謝っておく。今日の記事は、たぶんあまり褒めない。

世の中のレビュー記事は、その9割が絶賛でできている。買った直後の高揚感で書くから当然だし、俺も人のことは言えない。だが読者として本当に読みたいのは、むしろ「買ったのに合わなかった話」ではないだろうか。財布を痛めた人間の証言には、カタログにもプレスリリースにも絶対に載らない情報が詰まっている。というわけで今日は、キーボード界の名門FILCOの「Majestouch Convertible3 テンキーレス」を買った俺が、品質には文句なしと認めながら、それでも「合わなかった」と白旗を上げるまでの記録をお届けする。

誤解のないように先に言っておくと、これは「駄目な製品を告発する記事」ではない。「良い製品と、合わない人間」の記事だ。この2つはまったくの別物であり、その違いの中にこそ、キーボード選びの本質が埋まっていると俺は思っている。

なにせ相手はFILCOである。メカニカルキーボード好きなら一度は通る名門中の名門で、周囲の評判も軒並み高い。だからこそ俺は、試打もせずに確信していた。「名門なんだから、合うに決まっている」と。この慢心が、後々じわじわ効いてくることになる。

Majestouch Convertible3とは:特徴と接続方式

FILCOは日本のダイヤテックが展開するキーボードブランドで、メカニカルキーボードの世界では老舗中の老舗だ。Majestouchシリーズはその看板であり、「質実剛健」という四字熟語を物理的に具現化したような製品群である。

Convertible3はその名のとおり接続方式をコンバートできるモデルで、Bluetoothの無線接続とUSBの有線接続の両方に対応する。今回俺が選んだのはテンキーレスの日本語91キー配列。テンキーがないぶんデスクを広く使え、マウスまでの距離も近くなる。スイッチはいわゆるメカニカル軸で、購入時に打ち心地の異なる軸を選べる方式だ。細かい仕様や現在の価格は変動があるので、正確なところはリンク先で確認してほしい。

見た目は飾り気がなく、届いた箱からしてずっしり重い。この重さは安定感に直結していて、多少激しく打ってもキーボード自体は机の上で微動だにしない。キーを打つ前から「長く使える道具」の空気を放っており、所有して分かる作りの良さは間違いなく本物だった。ここまでは、何の文句もない。

正直レビュー:打鍵感が「合わなかった」理由

さて本題だ。使い込んだ俺の率直な感想を、そのまま置く。

正直、FILCOだから合うだろうと思っていたが、自分には合わなかった。打鍵感は悪くないものの、キーを深く押し込む必要があり、長時間使うと疲れる。作りの良さは感じるが、それ以上に「タイピングが気持ちよくない」という印象が勝った。品質重視=万人向けではない、という典型だと思う。

まず光の部分を正当に評価しておく。筐体の剛性は素晴らしく、たわみやビビリとは無縁。キーの一つ一つが安定していて、安っぽさは皆無だ。Bluetoothと有線をボタン一つで行き来できる実用性も高く、仕事用PCと自宅用PCをまたいで使う人間には素直に便利だった。「いいものを長く使う」という価値観に、製品としては完璧に応えている。

問題は、俺の指との相性だった。

メカニカルキーボードは、キーストローク、つまりキーが沈む深さがしっかりある。この「深さ」と打ち応えこそがメカニカルの魅力とされているのだが、俺の打ち方は浅い。ノートパソコンの薄いキーボードで育った撫で打ちタイプで、キーの表面を高速でタップするように打つ。この打ち方と、Majestouchの深いストロークが絶望的に噛み合わなかった。しっかり押し込まないと入力が確定しない感覚があり、1時間も打ち続けると指の付け根がじんわり重くなってくる。

分かっている。メカニカル愛好家からは「底まで打ち込むな、入力が確定した時点で指を返せ」という技術的に正しい指摘が飛んでくるだろう。だが、それができれば苦労はないのだ。20年かけて染み付いた打鍵フォームは、キーボードを替えた程度では矯正されない。人間がキーボードに合わせるべきか、キーボードが人間に合わせるべきか。俺は断固として後者派である。道具に矯正される筋合いはない。

一応、努力もした。「道具は使い込めば馴染む」という信仰のもと、数週間は毎日こいつで仕事をした。実際、多少は慣れた。だが「慣れた」と「気持ちいい」の間には、深くて暗い川が流れている。夕方に指が重くなる事実は最後まで変わらず、先に音を上げたのは道具ではなく俺の指だった。

もう一つ、買う前に想像していなかった論点として打鍵音がある。メカニカルの打鍵音は、打っている本人には心地よいリズムでも、Web会議の向こう側や同居人にとってはただの連打音になり得る。俺は会議中にミュートを多用する癖がついた。在宅勤務環境によっては、これも立派な検討材料になるはずだ。

そして軸の問題にも触れておかねばならない。メカニカルは軸によって重さも音も大きく変わるので、俺の「合わない」には軸選びの失敗が含まれている可能性がある。だがそれを差し引いても、「品質の高さ」と「自分にとっての気持ちよさ」がまるで別物だという事実は動かなかった。高級旅館の上等な羽毛枕より、使い古した自分の枕のほうがよく眠れることがある。あれと同じ構造である。

総評すると、作りは間違いなく一級品。ただし深いストロークをしっかり打ち込むスタイルが前提で、浅い撫で打ち派が選ぶと「疲れるキーボード」になり得る。これが俺の結論だ。

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合う人・合わない人:買う前のチェックリスト

ここからは感情を排して、相性の分岐点を整理しよう。キーボードの打ち方は、大きく2つの部族に分かれる。

(1)打ち込み族。 キーを底までしっかり押し、打鍵の手応えと音を楽しむタイプ。デスクトップPC文化で育った人や、タイプライター的な「打ってる感」に快感を覚える人だ。この部族にとってMajestouchは正真正銘の名機であり、剛性の高い筐体は強い打鍵を正面から受け止めてくれる。

(2)撫で打ち族。 ノートPCの浅いキーで育ち、表面を滑るように高速タップするタイプ。俺はこちらだった。この部族が深いストロークのメカニカルに乗り換えると、指が毎回余計な距離を往復することになり、それが積もって疲労として跳ね返ってくる。

自分がどちらの部族か分からない人は、今使っているキーボードの音を聞いてほしい。「タンッ」と底に当たる音が響くなら打ち込み族。「サスサス」と擦れるような音なら撫で打ち族の可能性が高い。この30秒の自己観察は、数千円から数万円の失敗を防ぐ最も安い保険である。

なお、撫で打ち族に生まれてしまったが、メカニカルへの憧れが捨てられないという業の深い人もいるだろう。その場合はストロークの浅い薄型メカニカルや、そもそも打鍵構造の違う方式という逃げ道もある。世界はMajestouchだけではない。憧れと相性は、分けて考えていい。

その上で、買う前に立ち止まるべき3か条を置いておく。一、現在ノートPCの直打ちに何の不満もない人。その快適さはこのキーボードでは再現されない。二、長時間のタイピングで手や指が疲れやすい自覚がある人。深いストロークは疲労を増やす方向に働き得る。三、試打せずに「名門だから大丈夫」と思っている人。かつての俺である。ブランドは品質を保証してくれるが、あなたとの相性までは保証してくれない。

逆に、打ち込み族で、道具は長く使う主義で、無線と有線を行き来したい人。この条件が揃うなら、Convertible3は極めて順当な選択になる。俺に合わなかっただけで、こいつが名機であること自体は、最後まで疑っていない。

結論:「品質と相性は別会計の法則」

最後にまとめよう。今回の授業料から俺が抽出した教訓は、「品質と相性は別会計の法則」である。

品質は、ブランドと価格である程度まで買える。だが相性は、自分の指でしか支払えない別会計だ。レビューの星がいくつ並んでいようと、その星はあなたの指がつけた星ではない。だからこのキーボードに限らず、打鍵感という極めて主観的な商品を買うときは、可能な限り実機に触れてから決めてほしい。触れないまま注文するなら、それは品質への投資と同時に、相性という賭けにもチップを積んでいるのだと自覚しておくべきだ。

そして、ここまで読んで「深いストローク上等、むしろご褒美」と思った打ち込み族のあなた。話は完全に変わってくる。俺の敗因は、そのままあなたの勝因だ。この質実剛健な名機は、あなたのデスクでこそ本来の性能を発揮するだろう。相性の合う手に渡ることを、合わなかった側の人間として願っている。価格や軸の在庫状況は変動があるので、最新の情報はリンク先で確認してほしい。

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