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毎月、静かに引き落とされ続ける数百円がある。クラウドストレージの月額だ。
写真が増える。「容量がいっぱいです」と脅される。仕方なくワンランク上のプランに上げる。また写真が増える。この繰り返しで、月額はいつの間にか固定費の椅子にどっかり座り込む。一回あたりは缶コーヒー程度の額だから、誰も真剣に見直さない。だが冷静に計算してほしい。月に千円なら年に一万二千円、十年で十二万円。それだけ払っても、データは自分の手元にはなく、値上げの通知一本で条件は変わる。俺たちは「自分の思い出」に家賃を払い続けているのである。
その家賃生活を終わらせるべく導入したのが、UGREENのNAS「NASync DH2300」だ。結論、思っていたより快適で、思っていたより「わかってる」やつだった。
NASync DH2300とは:自宅に建てる自分専用クラウド
NASというのは、雑に言えば「家のネットワークに置く、自分専用のデータ倉庫」だ。写真も動画も書類も全部ここに集め、家の中のPCやスマホから、そして外出先からもアクセスできる。DH2300は2つのドライブベイを持つモデルで、同じデータを2台のディスクに同時に書き込む「ミラー構成」にすれば、片方が壊れてももう片方が生きているという安心設計が組める。
UGREENは充電器などで知られるメーカーだが、NAS参入組としてはアプリ周りの作り込みに定評が出てきている。ドライブは別売りの場合など構成で価格が変わるので、現在のセット内容と価格はリンク先で確認してほしい。ここでは「サブスクの代わりに、一度買って自宅に置くクラウド」と理解してもらえれば十分だ。
DH2300を使った本音レビュー
俺の感想はこうだ。
ミラーで構成しているけど、全然不自由を感じない。アプリで外部からデータにアクセスできるのも「わかってる」って感じ。SaaSを契約するなら、こっちの方がいいのでは?
光の部分を具体的に。まずミラー構成の安心感。ミラーにすると使える容量は半分になる。理屈の上では「もったいない」構成だ。だが実際に運用してみると、容量の不自由は感じない。家庭の写真と書類がメインなら、今どきのディスク容量は十分すぎるほど広い。それより「ディスクが1台死んでもデータは無事」という保険が常時効いている精神的な平穏のほうが、はるかに大きい。データ消失の恐怖は、一度でも経験した人間なら分かるはずだ。
次にアプリ。NASという製品ジャンルは伝統的に「設定画面が業務用」で入門者を殺しにくる世界だったのだが、こいつはスマホアプリから外出先のアクセスまでがすんなり通る。出先で「あの書類、家のNASにある」が数タップで解決したとき、思わず「わかってるじゃん」と口に出た。技術に詳しい家族がいない家庭でも、写真の自動バックアップ先として普通に成立する。
闇も書いておく。第一に、初期費用。本体とディスク2台で、クラウド数年分の先払いに相当する出費が最初に来る。第二に、NASはあくまで「自宅の機械」なので、停電や機器故障、そして家そのものの災害には無力だ。本当に消えたら困うデータは、NASに加えてもう一段のバックアップ(クラウドの最小プランでも、実家に置く外付けでもいい)を組み合わせるのが鉄則である。第三に、ファンとディスクの動作音が静かな部屋ではわずかに聞こえる。寝室設置は勧めない。
導入した夜の話をしよう。ディスクを2台差し込み、アプリの指示に従ってミラー構成を選び、スマホの写真の自動バックアップをオンにする。ここまで、構えていたほどの専門知識は要らなかった。そして深夜、家族の写真が数年分、静かにNASへ流れ込んでいくプログレスバーを眺めながら、俺は妙な感慨に浸っていた。子どもの写真、旅行の動画、スマホを買い替えるたびに「どこかにはあるはず」と曖昧に引き継がれてきたデータたち。それが今、自宅の小さな箱に、二重化されて集結していく。データの住所が決まるというのは、想像以上に精神衛生にいい。
「わかってる」と感じた瞬間を、もう一つ挙げる。出張先のホテルで、家のNASの中の書類が普通に開けたときだ。VPNがどうとか、ポート開放がどうとか、一昔前のNASで震えたあの呪文たちを、アプリが全部裏で処理している。技術の進歩とは、専門用語が利用者の視界から消えることなのだと実感した。妻のスマホにもアプリを入れ、写真の自動バックアップを設定したが、説明に要した時間は3分。「勝手に保存されるから何もしなくていい」——家庭内ITの理想形である。
ミラー構成(RAID1)について、一応の解説を脱線的に。2台のディスクに同じ内容を常に書き込むので、使える容量は合計の半分になる。「半分損」に見えるこの構成の本当の意味は、ディスクというものが「いつか必ず壊れる消耗品」だという前提に立っていることだ。片方が壊れたら、新しいディスクに差し替えれば復元される。データ保全の世界では、楽観は罪であり、冗長こそ愛なのである。なお繰り返すが、NAS本体ごと水没や火災に遭えばミラーも道連れなので、本当に失えないデータの「最後の砦」はもう一段外に持つこと。俺は厳選した最重要フォルダだけ、クラウドの無料枠に逃がしている。月額ゼロ円で二段構えが完成する、ケチと安全の両立だ。
総評するなら、「毎月払う」を「一度買う」に変換する装置として素直に優秀。アプリの出来が良く、初NASの一台目として不自由がない。
クラウド課金 vs 自宅NAS:結局どっちが得か
ここは遊び抜きで計算しよう。ストレージの選択肢は3つある。
(1)クラウド課金継続派。 初期費用ゼロ、災害にも強い、何も考えなくていい。ただし月額は人質としてのデータがある限り続き、値上げとプラン改定の決定権は常に向こうにある。データ量が少ない人(無料枠で収まる人)は、実はこのままが最適解だ。
(2)外付けHDD派。 一番安い。ただしPCに繋いだときしか使えず、スマホからの自動バックアップや外出先アクセスとは無縁。バックアップが「手動の善意」に依存するので、だいたい三か月で更新が止まる。人間を信用しすぎた構成である。
(3)自宅NAS派(DH2300はここ)。 初期費用は重いが、月額はゼロ。仮にクラウドに月1,000円払っているなら、数年で本体代を追い越す計算になる(プランや構成で変わるので、あくまで目安だ)。しかも容量の主導権と、家族全員分のバックアップ先という拡張性がこちらの手に残る。
買ってはいけない3か条。一、データが無料枠に収まっている人(解決すべき問題がまだ無い)。二、バックアップの二段構えを絶対にサボる自信がある人(NAS一台を過信すると、いつか泣く)。三、機械の初期設定に一切触りたくない人(簡単になったとはいえ、ゼロではない)。
逆に、家族の写真が年々増え、クラウドの請求も年々増えている人。その請求書は、NASへの乗り換え案内だと思っていい。
導入検討者からの質問に、先回りで答えておく。
Q. ディスクは何を買えばいい? NAS用と銘打たれた、24時間稼働を想定した設計のHDDを選ぶのが定石だ。容量は「現在の全データ×3倍」を目安にすると、数年は買い足しに悩まない。ミラー構成なら同容量2台を同時に用意すること。
Q. 設定は本当に素人でもできる? スマホの初期設定が一人でできる人なら、アプリの案内に従うだけで基本構成までたどり着ける。昔のNASにあった「ネットワークの知識がないと門前払い」の空気は、この世代にはない。ただし多機能ゆえに全部を使いこなす必要はなく、まずは「写真の自動バックアップ」と「外からのアクセス」の二つが動けば、投資の元は取れている。
Q. 電気代は? 常時稼働の小型機器なので、月あたりの電気代は照明一つ分のオーダーだ(構成と設定で変わるので目安として)。クラウドの月額と比べる際は、この運用コストも計算に入れると公平である。
Q. 家族に「また機械買ったの」と言われたら? 「全員のスマホの写真が、勝手に、無料で、二重に保存され続ける箱」と説明してほしい。我が家ではこの一文で予算が通った。技術の説明ではなく、家族にとっての恩恵の説明をするのが、家庭内稟議の鉄則である。
一つだけ約束してほしいのは、導入した日に「復元の練習」をしておくことだ。バックアップの価値は、戻せて初めて成立する。ファイルを一つ消して、NASから戻す。この5分の避難訓練をやった人だけが、本当の安心を手に入れる。
結論:「月額は、積もると山になるの法則」
最後にまとめよう。今回の教訓は「月額は、積もると山になるの法則」である。
サブスクの恐ろしさは、一回の金額が小さいことだ。小さいから見直されず、見直されないから一生続く。だが十年単位で積めば、それは立派な山になる。データという「これから先も増え続け、絶対に手放せないもの」については、家賃を払い続けるより、家を建てたほうが安い局面が必ず来る。DH2300は、その家としては上出来な物件だった。
まずは自分が今クラウドに年いくら払っているかを計算し、それからリンク先で本体の価格と見比べてほしい。損益分岐点が思ったより近くて、ちょっと悔しくなるはずだ。


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