REON POCKET PRO レビュー|「着るクーラー」は幻想だった。買う前に知るべき現実と、それでも試す価値がある人

シャツの襟元と小さな白いウェアラブルデバイス

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覚悟だけ先に決めておいてほしい。今日の記事は、いつもより辛口だ。俺はいつも製品の光を先に見つけてから闇を書くのだが、今回ばかりは、夢が覚める話から始めなければならない。ソニーのREON POCKET PRO。世間で「着るクーラー」と呼ばれがちな、あのウェアラブル冷却デバイスの話である。

前提として、日本の夏はもはや気象ではなく災害である。駅から会社までの10分でシャツは背中に貼り付き、会議室に着く頃には人としての尊厳がだいぶ目減りしている。そこへ「ソニーが作った着るクーラー」という響きが飛び込んできたら、そりゃ財布も開くだろう。俺も開いた。テクノロジーが夏を倒す歴史的瞬間を、この背中で目撃したかったのだ。

箱を開けた日のことはよく覚えている。ソニーらしい端正なパッケージに、精密機械の凛とした佇まい。充電して、専用インナーに装着して、真夏の玄関を開けたときの俺は、控えめに言って無敵のつもりだった。

結論だけ先に言っておく。これはクーラーではない。そして「クーラー」の期待値のまま買うと、かなりの確率で後悔する。

REON POCKET PROとはどんな冷却ガジェットか

まず冷静に、何者なのかを整理する。REON POCKET PROは、首の後ろから背中のあたりに装着して、肌に触れる面を直接冷やすタイプのウェアラブル冷却デバイスだ。仕組みをざっくり言えば、電気の力で金属面を冷たくして体から熱を奪い、奪った熱を反対側から排気する構造である。

ここで押さえるべき本質は、「空間を冷やす機械ではなく、体の一点を冷やす機械」だということだ。エアコンは部屋の空気ごと冷やすから全身が涼しい。こいつは接触面から熱を奪うだけだから、冷えるのはその周辺に限られる。物理的に、両者はまったくの別物である。この時点で、「着るクーラー」という通称がいかに罪深い誇張かが分かってもらえると思う。

装着は専用インナーやネックバンドを使い、スマホアプリと連携して動作モードを調整できる。ガジェットとしての作り込みはさすがソニーで、細かい仕様や現在の価格は変動があるため、正確なところはリンク先で確認してほしい。ここでは「背中の一点を冷やす精密機械」と理解しておけば話が早い。

辛口レビュー:冷えるのか、冷えないのか

実際にひと夏付き合った俺の率直な感想を、そのまま置く。

正直、「着るクーラー」を期待するとガッカリします。冷たさは確かにありますが、背中のごく一部だけ。さらに排気がむわっとして不快で、リュックを背負うと欠点が一気に表に出ます。ガジェットとしては面白いものの、実用性より実験的な製品という印象が強く、万人向けとは言えません。

順番に解剖していく。まず光の部分。冷たさは、確かにある。スイッチを入れた瞬間、背中の一点にひんやりした感触が生まれるのは事実で、この瞬間だけは確かに未来を感じる。真夏の熱気の中に一点だけ生まれる金属の冷たさは、想像するより気持ちいい。

ガジェットとしての面白さも本物だ。アプリから動作を細かく調整できて、状況に応じた自動運転的な賢さもある。「体に装着する空調」という発想をこの完成度で製品化してくるあたり、さすがはソニーで、技術者の本気は随所から伝わってくる。

装着感そのものも悪くない。専用インナーはよくできていて、重さも「背中に何かいるな」と時々意識する程度。腐ってもソニー、人体に機械を着けさせる作法は心得ている。つまり問題は着け心地ではない。その先の期待値なのだ。

だが、闇が重い。冒頭の続きを話そう。無敵のつもりで玄関を出た俺は、駅に着く頃、背中の一点だけが涼しくて、それ以外のすべてが暑いという新感覚の中にいた。俺の背中の一部だけが秋、残りの世界は全部真夏。人体というのは、一点の冷たさでは全体の暑さを帳消しにできないのだと、身をもって学んだ。

闇その1、冷える範囲の狭さ。冷たいのは接触しているごく一部だけで、体全体の暑さは何も解決しない。体感を正確に言語化するなら、「冷えた缶コーヒーを背中に一本当てながら歩いている」に近い。気持ちいい。気持ちいいのだが、それは断じてクーラーではない。

闇その2、排気の存在。奪った熱は、装着位置の近くから排気される。この排気がむわっと生ぬるく、せっかくの冷感を体感レベルで相殺してくる。「背中は少し冷たい、でも周囲の空気は生ぬるい」という、なんとも形容しがたい矛盾を抱えて歩くことになる。

闇その3、リュックとの相性が最悪。背負った瞬間、排気の逃げ道は塞がれ、装着部は圧迫され、この製品の弱点が一斉に牙をむく。リュック通勤者の俺にとって、これは致命傷だった。ソニーに罪はない。だが俺の背中には、リュックという先住民がいたのだ。

運用の現実も書いておく。使い込んで分かったのは、これは「一日中つけっぱなしにする装置」ではなく、「暑さの山場だけ稼働させる装置」だということだ。駅までの徒歩、乗り換えのホーム、炎天下の信号待ち。そういう数分から十数分の熱の山場をしのぐ道具と割り切ったときに、いちばん納得感があった。電池の持ちも設定と使い方次第で大きく変わる印象なので断定はしないが、山場運用に切り替えてからは困らなくなった。逆に言えば、山場が一日中続く環境では、そもそも勝負にならない。

要するにこれは、実用品というより「未来の試作品に先に触れる権利」である。そう理解して初めて、この製品は正当に評価できる。

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冷却グッズ比較:買ってはいけない人・試す価値がある人

ここは誠実に切り分けたい。まず夏の冷却手段の派閥を整理しよう。

(1)ハンディファン派。 安くて分かりやすい風。ただし真夏の屋外では温風を浴びる装置になりがちで、片手も塞がる。

(2)冷感グッズ派。 冷感タオルや首掛け冷却リングなど。安価で効果も直感的だが、持続時間との勝負になる。

(3)空調服派。 ファン付きウェアで全身に風を通す本格派。冷却の実力では最有力だが、見た目が完全に現場仕様で、オフィス街では勇気が要る。

(4)ウェアラブル冷却派。 REON POCKET PROはここ。最もスマートで目立たないが、冷える範囲は最も狭く、価格はおそらく最も高い。

その上で、買ってはいけない人を明確にする。一、エアコン並みの涼しさを期待している人。その期待は物理法則に裏切られる。二、リュックで通勤・通学する人。弱点が全部表に出る。三、炎天下に長時間いる人。焼け石に水という言葉を体で学ぶことになる。この3タイプには、冷感リングや空調服といった枯れた手段のほうが、価格も効果の分かりやすさも上だと思う。

一方で、試す価値がある人もいる。ジャケット着用が義務で、汗だくの見た目が許されない営業職。徒歩区間が短く、電車と屋内の移動が中心の人。そして何より、新しい技術に金を払うこと自体を楽しめる人。この製品の本当の顧客は「涼しくなりたい人」ではなく、「未来を先に体験したい人」だと俺は思っている。

もう少し具体的なシーンに落として想像してほしい。たとえば、自宅から最寄り駅までが徒歩15分ある人。この区間は屋外の熱地獄だが、駅に着けば冷房の効いた電車と屋内が待っている。つまり「山場は最初の15分だけ」という人だ。玄関を出る直前にスイッチを入れ、背中を冷やしながら駅までしのげば、ホームに着く頃には冷房が引き継いでくれる。熱の山場が短く区切られた通勤なら、一点集中の冷却はむしろ理にかなう。あるいは、アプリの設定をいじってどのモードが合うか試すこと自体を楽しめる人。冷却を「実用性の点数」ではなく「実験の面白さ」で受け取れるなら、背中で未来を検証する夏そのものが娯楽になる。このどちらかに当てはまるなら、後悔の確率はぐっと下がるはずだ。

ちなみにうちでは、夏のキッチンで妻が使う第二の人生も試した。火元の前は常に熱の山場で、屋内・短時間・服装自由という相性の良い3条件が揃う。こうした場面を生活の中に見つけられる人ほど、この機械は輝く。

副産物の話もしておくと、首元の機械に気づいた同僚には高確率で「何それ」と聞かれる。新しもの好きにはご褒美タイムだが、目立ちたくない人には減点要素。ここも性格で分かれる。

つまり、この買い物の成否は期待値の設定で決まる。「クーラー」を買ったつもりの人は失望し、「体温との実験装置」を買ったつもりの人は、夏中いじり倒して楽しめる。同じ製品なのに、だ。

結論:「面白いと快適は別会計の法則」

最後にまとめよう。今回の教訓を、俺は「面白いと快適は別会計の法則」と名付けた。

ガジェット好きが財布を開くとき、「面白そう」と「快適になりそう」はしばしば混同される。だがこの2つは別の口座なのだ。REON POCKET PROは、面白さの口座には間違いなく入金してくれる。装着した瞬間の未来感、アプリをいじる楽しさ、話のネタとしての強さ。ここは文句なしだ。だが快適さの口座への入金は、服装と移動スタイルと期待値の条件が合う人に限られる。ここを混同して買うと、夏の終わりに引き出しの奥で眠る精密機械が一台増える。この法則が、俺の買ってきた謎ガジェットたちの屍の上に立っていることも白状しておく。

それでも俺は、この製品を全否定しない。誰かがこういう実験に金を払わなければ、未来の当たり前は永遠に生まれないからだ。いつか完成する「本当に着るクーラー」の礎に俺の背中がなったと思えば、悪くない買い物である。自分が「実験に参加する側」の人間だと思うなら、現在の仕様と価格をリンク先で確認してみてほしい。季節ものガジェットは時期によって価格が動くこともあるので、実験参加費を抑えたい人はタイミングを図るのも手だ。そうでないなら、今年の夏は素直に日陰を歩こう。

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