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正直に言うと、この記事は書き出すまでにかなり時間がかかった。レビューという文章は、不満があるほど筆が進む。動作音がうるさいとか、ボタンが固いとか、欠点というのは書き手にとって最高の燃料なのだ。ところが今回の主役、パナソニックのラムダッシュPRO 5枚刃 ES-LV9Wには、その燃料がほとんどない。長年使って、不満らしい不満が見当たらないのである。レビュアー泣かせとはこのことだ。
だが冷静に考えてみれば、これは異常事態である。毎朝、高速で動く刃物を顔面に当てるという行為を何年も繰り返して、不満がほぼゼロ。世の中の道具で、この水準を達成しているものがどれだけあるだろうか。今日は「欠点を探すほうが難しい道具」について、それでも光と闇の両面から誠実に書いてみようと思う。
ちなみに俺のシェーバー遍歴は、安物を数年ごとに買い替える放浪時代から始まっている。数千円の機械で剃った気になり、夕方の顎を撫でては絶望する。あの流浪の日々に終止符を打ったのがこいつだった、という個人的な文脈も先に添えておく。
その前に一つだけ算数をさせてほしい。仮に髭剃りに1日5分かけるとすると、1年で約30時間。10年で約300時間になる。人生において髭剃りとは、無視できない規模で開催され続ける「定例会議」なのだ。この会議の質を上げる投資が無駄になるはずがない、というのが俺の基本姿勢である。
ラムダッシュPRO 5枚刃 ES-LV9Wとはどんなシェーバーか
まず基本情報を整理しよう。ラムダッシュはパナソニックの電気シェーバーの看板シリーズで、刃が左右に高速で振動する「往復式」と呼ばれるタイプの代表格だ。国産シェーバーの深剃り番長として、長年この土俵の横綱を張っている。
その中でES-LV9Wは5枚刃の上位グレードにあたり、全自動洗浄充電器が付属するモデルである。使い終わったシェーバーを機械に立てて放り込むと、洗浄から乾燥、充電までを勝手に済ませてくれる。要するに執事付き物件だ。5枚刃という数字も伊達ではなく、肌に当たる刃の面積が広いぶん、一往復あたりの仕事量を増やす設計思想だと理解している。
なお、パナソニックのシェーバーはグレード展開が広く、普及帯の3枚刃から最上位の6枚刃まで階段が続いている。ES-LV9Wは5枚刃世代の上位という立ち位置で、旗艦級の性能を求めつつ最頂点までは行かない、現実的な落としどころだった。細かい仕様や現在の価格は変動があるので、正確なところはリンク先で確認してほしい。ここでは「往復式シェーバーの優等生、その上澄み」という理解で十分だ。
本音レビュー:深剃りは本物か、欠点はないのか
長年使った俺の率直な感想を、先に置いておく。
長年使ってきたシェーバーですが、深剃り性能は最後まで期待以上でした。高級感と完成度が高く、剃り味に不満を感じたことはほとんどありません。特に大きな欠点はなく、信頼して使える一台です。ただ、長く使った分、次は別のモデルも試してみたいと思えるくらいには満足しています。
光の部分から掘り下げる。まず深剃り。俺の髭はしぶとい方で、安いシェーバーだと夕方には顎が青ざめてくる質なのだが、こいつで剃った日は夕方までの持ちが体感で明確に違った。そして「最後まで期待以上」という点が重要だ。買った直後の感動が続くのは当たり前で、道具の真価は数年後の朝に出る。替刃を交換しながら使い続けて、剃り味への信頼が最後まで揺らがなかった。これは完成度という言葉でしか説明できない。
あご下や首筋といった難所での剃り残しの少なさも、体感では優秀だった。安物時代は同じ場所を何往復もしては肌を赤くしていたが、そもそもの往復回数が減った。刃の仕事量が多いおかげだと解釈している。
高級感も光だ。毎朝手に持つ道具の作りがしっかりしていると、寝起きの雑な儀式が少しだけ丁寧になる。そして地味に効くのが全自動洗浄充電器である。刃の手入れというのは「やらないと性能が落ちるが、やる気も出ない家事」の典型で、手入れをサボって剃り味を落とすのが電気シェーバーの定番の失敗ルートだ。ES-LV9Wはそのルートを執事が構造的に塞いでくれる。放り込むだけで、翌朝には清潔な状態で待機している。だらしない人間ほど、この仕組みに救われる。俺のことだ。
朝の実務性能にも触れておく。俺の場合、洗面台の前に立ってから剃り終わるまで、体感で数分もかからない。T字カミソリ時代に必要だったシェービング剤も蒸しタオルの儀式もなしで、寝起きの顔のまま剃って終わる。このスピードと剃り負けしにくさの両立こそ、往復式上位機の存在意義だと思っている。もちろん肌質には個人差があるので、そこは俺の体感として聞いてほしい。
さて、闇の話をしたいのだが、冒頭で白状した通り、大きな欠点が見当たらない。それでも公平を期すため、あえて影の部分を挙げていく。
影その1、初期投資と替刃コスト。上位モデルなので本体は決して安くないし、性能維持のために替刃の定期交換も推奨されている。つまり「買って終わり」ではなく、ゆるやかな定期課金型の道具である。ただしこれはこの機種固有の欠点というより、まともなシェーバー全体の宿命だ。
影その2、洗浄充電器は場所を取る。全自動洗浄は最高に便利なのだが、その執事はそれなりの設置面積を要求してくる。うちの洗面所では堂々の一等地を占拠中だ。さらに洗浄には専用の洗浄剤を使う運用なので、切らしたときに補充する係は結局人間である。執事にも人件費はかかるのだ。
影その3、退屈であること。毎朝ちゃんと動き、ちゃんと剃れて、事件が何も起きない。ガジェットに刺激を求める人には、この完璧さはむしろ物足りないかもしれない。実際、長年使った俺の中に最後に湧いた感情は「次は別のモデルも試してみたい」という浮気心だった。ただ誤解しないでほしいのだが、これは不満ではない。満足しきった者だけに芽生える好奇心である。長年連れ添って、別れの理由が「嫌いになったから」ではなく「他も見てみたくなったから」。道具として、これ以上の褒め言葉があるだろうか。
電気シェーバーの選び方:髭剃り4派閥を比較する
ここでロジカルに整理しよう。毎朝の髭処理には、実質4つの派閥がある。
(1)T字カミソリ派。 深剃りの王。ただし肌への負担と時間コストが重く、替刃も継続的にかかる。風呂場でゆっくり剃る時間がある人向け。
(2)安価シェーバー派。 数千円で時短は達成できる。ただし濃い髭との相性は厳しく、夕方の青さと引き換えになりがちだ。
(3)回転式シェーバー派。 肌あたりが優しいとされる一派。円を描くように剃る独特の作法があり、往復式から乗り換えると戸惑う人もいる。
(4)往復式上位機派。 ES-LV9Wはここ。初期投資は重いが、深剃りとスピードの両立が最大の武器だ。
選び方の軸はシンプルで、「髭が濃い」「毎朝剃る必要がある」「朝の時間が惜しい」。この3条件が揃うほど(4)の価値が跳ね上がる。仮に本体と数年分の替刃で合計6万円かかるとして、5年使えば1日あたり約33円。夕方の青髭と剃り負けから解放される値段として、俺は安いと思う(あくまで仮の計算なので、実際の価格はリンク先で確認してほしい)。
替刃コストの考え方も示しておく。刃は消耗品で、定期交換が推奨されている。これを「追加出費」と見るか「性能のサブスク」と見るかで印象は変わるが、俺は完全に後者派だ。刃を替えた朝の剃り味は、ほぼ新品のそれに戻る。本体を買い替えずに性能をリセットできる仕組みだと思えば、むしろ良心的である。
逆に、買ってはいけない人も明確にしておこう。一、髭が薄く、数日に一度しか剃らない人。下位グレードで十分お釣りがくる。二、風呂場の髭剃りを瞑想タイムとして愛している人。T字の儀式を奪う理由がない。三、道具に事件性と話題性を求める人。こいつは退屈なほど優秀なだけの機械だ。ここに当てはまらないなら、候補に入れて損はない。
結論:「無口な名品の法則」
最後にまとめよう。俺はこの手の道具を「無口な名品の法則」と呼んでいる。
本当に優れた道具は、話題を提供しない。壊れないから修理の武勇伝が生まれず、失敗しないから笑い話にもならず、ただ毎朝黙って仕事をして、使い手の記憶にすら残らない。SNSでバズる家電が「事件を起こす家電」だとすれば、こいつは絶対にバズらない側の家電だ。そしてES-LV9Wが長年の使用で俺に与えた最大の不満が「語ることがない」なのだから、これはもう実質的な優勝である。逆に「毎日事件を起こす道具」と暮らす苦労は、諸君も何かしら心当たりがあるだろう。道具の沈黙は金なのだ。
髭剃りは、人生に数百時間規模で居座り続ける定例会議だ。その会議の質を上げる投資を「たかがシェーバー」と切り捨てるか、「毎朝の300時間への投資」と捉えるか。答えが後者に傾いた人は、リンク先で現在の価格だけでも見ておいてほしい。この手の上位機種は、セールやモデル切り替えの時期に価格が動くことも多い。無口な名品は、あなたの洗面所でも黙々と働くはずだ。


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